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畦ヶ丸と滝めぐり

畦ヶ丸と滝めぐり

地獄棚を見上げる

畦ヶ丸と権現山を中心とする山域には美しい沢や滝が多くあります。東海自然歩道が安全に使えれば、下棚、本棚、大滝などは、容易に見ることができます。

2015年の台風11号による豪雨で、西沢沿い登山道では木橋の多くが流されました。入山計画にあたっては、登山道情報をご確認ください。

バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 → 大滝橋 登山口
バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 ← 西丹沢自然教室 登山口

地図 地理院地図: 畦ヶ丸

天気 畦ヶ丸の天気: 畦ヶ丸 , 西丹沢自然教室

?  登山道情報(西丹沢自然教室)


コース & タイム 鉄道駅 7:37 谷峨駅 7:46 バス停== 8:20 大滝橋バス停 8:21--- 8:57 大滝 9:03 --- 10:02 地獄棚 10:31 --- 11:07 一軒屋避難小屋 11:08 --- 11:50 大滝峠上 12:04 --- 12:54 畦ヶ丸避難小屋 13:18 --- 13:20 畦ヶ丸 13:22 --- 14:12 善六ノタワ休憩所 14:15 --- 14:18 善六ノタワ14:18 --- 14:36 砂のきれいな沢(西沢出合2.7Km)14:42 --- 15:31 本棚出合 15:32 --- 15:36 本棚 15:48 --- 16:05 下棚出合16:05 ---16:10 下棚 16:15 --- 16:57 西丹沢自然教室 17:05 バス停 == 17:49 谷峨駅 17:59 鉄道駅
※歩行時間には水飲み休憩と撮影の時間が多く含まれています。
畦ヶ丸 あぜがまる:標高 1292.3m
単独 2015.7.21 全 8時間36分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

7月21日、梅雨明け後の真夏日、西丹沢の畦ヶ丸に登り、その周囲の滝をめぐって来ました。名づけて納涼山行です。何年か前の県の広報誌で、真夏にお奨めの場所として、畦ヶ丸が紹介されていました。それ以来、いつか行こうと思っていたのですが、あまりに暑くなったので、「今でしょ!」と思って行くことにしたものです。そして、期待を上回る大満足の一日になりました。ただ最後の30分間は、何度も西沢の渡渉を余儀なくされました。

段落見出し「当分の間、非常識登山はつつしんで下さい。」

午前7時10分、新松田駅前のバス乗り場では、5~6人が西丹沢行きのバスを待っていました。バスの発車は7時15分。この分なら、谷峨駅で乗っても座席が空いているでしょう。御殿場線沼津行き電車は7時23分発なので、駅前のコンビニでゆっくりと買い物をすることができました。谷峨駅の付近に店はありません。

電車が谷峨駅に近づくと、最後尾の車両に移動し、その最後尾のドアから降ります。車掌さんに切符を渡し、バス停に行くまで1分とかかりません。大野山の見えるバス停では、2人の山姫がバスを待っていました。このとき、7時38分。バスは7時41分の予定ですが、大体5分遅れで来るので、余裕綽綽です。予想どおり、バスには空席がたくさんありました。丹沢湖の水は黄色っぽく濁っていましたが、これは台風11号による大雨で、山の土が多量に流入したのでしょう。

大滝橋でバスを下りたのは、私だけでした。さっそく、左の林道に進みます。そして大滝橋手前のカーブから左のやや狭い道に入ります。東海自然歩道の大きな案内板があり、その柱に、まだ新しい注意書きが張ってありました。「台風通過により、山は大荒れになりました。当分の間、非常識登山はつつしんで下さい。西丹沢自然教室」と書かれています。そのとおり!全く同感です。ただ、「当分の間」というのがちょっと引っかかりました。気をつけて行きます。

段落見出し滝めぐり、その一 大滝(落差約10m)

大滝を目指し、東海自然歩道を歩きます。大滝沢の岩を縫って流れる水は美しく、これを見ただけでも、きょうは来てよかったと思いました。半日陰の登山道を進んで行くと、ヤマユリが5株ほど、吊るされるように咲いていました。それぞれに2輪ずつほど花があります。泥沼に咲くハスと同様、地獄の何丁目でも美しく咲くヤマユリは、特別な花だと思います。この日も、滝の落ちる断崖や、暗い谷間に明るく咲くヤマユリをいくつも目にしました。

東海自然歩道から左下の大滝沢に下りる道には、杭と保護ロープが設置されていて、すぐに分かりました。左岸の川原に下り立つと、上流から釣り人がやって来ました。増水していて、ひどい目にあったそうです。私は試しに左岸を少し歩いてみましたが、直ぐに行き詰まりました。流れを遡行するには、沢歩きの仕度が必要です。仕方なく始めの位置に戻って、渡渉することにしました。右岸は問題なく歩けます。その後一度左岸に渡り返し、大滝に至りました。

大滝はその名のとおり、水量が豊かで、豪快に飛沫をあげながら釜に落ちていました。この滝は登山道から見下ろすこともできます。でも、間近で、真正面から向き合いたくて、ここに来ました。全力を尽くして流れ落ちる滝の波動を、私も全身全霊で受け止めようとします。私の霊の中にこの滝を取り込んで、持ち帰る、と言ったら大げさでしょうか。五感を動員して、心に録画する気持ちで眺めました。

段落見出し滝めぐり、その二 地獄棚(落差約50m)

東海自然歩道に戻ります。次の地獄棚を目指して登って行くと、左下に先ほどの大滝が見えました。水は垂直に落ちているのではなく、かなり斜めに落ちていることが分かります。その先で東海自然歩道は大滝沢左岸から右岸に移るのですが、木橋が流されていたので、浅瀬を選んで渡渉しました。すぐにまた左岸へと渡り返すのですが、そこの木橋は大丈夫でした。

マスキ嵐沢が見えてくると、登山道が大滝沢から離れてしまうので、下りやすそうな所を選んで、マスキ嵐沢の左岸に下りました。石を伝って、靴を濡らさずに右岸に移動。これより大滝沢を遡行します。といっても、沢歩きの仕度はしてないので、できるだけ水際を歩き、歩けなくなったら流れの浅い箇所を選んで渡渉するということの繰り返しです。途中に堰堤が立ちはだかりますが、左岸の石垣のわきを越えることができます。お助けのトラロープが2本張られていました。

大滝沢をさらに遡ると、ゴルジュ風に両岸から壁が狭まり、強い流れが屈曲していました。ここは左岸を慎重にへつります。そこから5分ほど行くと、目指す地獄棚が見えました。凄い! その容姿は、ただの滝ではありません。落ちる水は大きく三段に跳ね、最下段はウェディングドレスのように裾を右手に広げています。キラキラ光る飛沫を浴びながら滝の真下に立つと、その父性的な威厳と母性的な優美さに酔いしれそう。これは地獄棚ではなく、極楽棚ではないか!

段落見出し一軒屋避難小屋へ

地獄棚の下で昼食を取り、ぜいたくな時間を30分ほど過ごしました。さて、東海自然歩道にどのように戻るべきでしょうか。安全に、来た道を戻るか?近道である左岸の尾根を登るか? 尾根の取り付き口を探しましたが、全く不明。でも下から見える限りでは、どこから取り付いても、行けそうに思いました。立ち木も多くあります。思い切って登り始めると、土が湿って柔らかくなっていました。手をかける岩も木もないところでは四駆モード(両手両足)を使ってヤモリのようにへばり着いたので、湿っていたズボンが泥まみれになりました。

トラロープが見えたときは、ほっとしました。ルートが間違っていなかったからです。もしこの尾根を下るとしたら、ロープを用意すれば安心でしょう。やがて左手に細く長く落ちる滝が見えてきました。雨棚は見えません。左はるか下、恐ろしく深い谷を流れる鬼石沢が、とても美しく見えます。尾根が平坦になって、しばらく歩くと道が二手に分かれていました。右は下る道、左は登る道。迷わず左に進みます。

道が極端に良くなって、ふと気付きました。「ここは東海自然歩道だ!」分岐に戻って逆から見ると、左右に岩があり、切通しのようになっていました。再び前進に転じ、桟道を通って鬼石沢に接近すると、一軒屋避難小屋が見えてきました。古いスタイルで、ガラス窓はありません。中に入ると、ログハウス風のテーブルと丸太椅子があり、壁際のベンチでは四人くらいが横になれそうでした。ゴミはなく、清潔な感じでしたが、テーブルの上は白カビのようなものが着いていました。でもこの季節の無人小屋としては上等です。

段落見出し大滝峠上へ

一軒屋避難小屋から大滝峠上を目指し、ステタロー沢沿いに東海自然歩道を登ります。ひんやりした空気に包まれ、いい感じの道をルンルン気分で登って行きました。先ほどまでの悪路と比べると、ウソのように楽チンです。さすがは東海自然歩道。ステタロー沢を数回横断しましたが、渡渉というほどではありませんでした。ヒョイ、と動いたヒキガエルも友だちみたいに思えました。

道がステタロー沢を離れると、あっという間に山が静まり返りました。そして行く手に古びた道標が見え、一登りで稜線に立ちました。大滝峠上にしては、あっけないし早過ぎるな、と思ったら、そこは支尾根(標高約945m点)でした。でも、反対側の谷から昇って来るそよ風を受け、気分は上々。その10分ほど先が、大滝峠上でした。朽ちたベンチと、東海自然歩道のルートが変更になった(平成4年)ことを告げる看板があります。

ここで、靴と靴下を履き替えました。軽快なスニーカーを履いたのはいいのですが、脱いだ登山靴がリュックに入らず、やむを得ず手提げ袋に入れて、リュックに乗せることにしました。何という鳥か分かりませんが、「プピポ」と鳴いています。私も口笛で「プピポ」とオウム返しにしました。すると今度は「ピイ」、私も「ピイ」。家で凍らせてきたお茶はまだ半分が氷のまま。気持ちよく喉を通って、胃に沁み込んで行きました。

段落見出し爽快な山頂、畦ヶ丸

大滝峠上から先も、快適な尾根歩きでした。ブナやカエデが作る木陰は適度に明るく、適度に涼しく、傾斜もちょうどいいではないか、と。「この先200m、畦ヶ丸避難小屋あり」の案内板から、ちょっときつい登りを頑張ると、避難小屋に到着しました。いつもの習慣で、中を拝見します。まず目に付くのは、中央の大きなストーブ。冬には薪もあるのでしょうか。右奥の板の間は広く、ベンチと合わせて10人以上が横になれそうです。この小屋もゴミ一つなく、きれいに掃除されていました。

小屋の上手の広場に道標があり、前進が「畦ヶ丸0.1Km」左が「モロクボ沢ノ頭0.6Km」来た道が「大滝峠上1.3Km」となっています。ここのベンチ兼テーブルで二度目の昼食にしました。日差しがとても心地よかったので、靴と靴下を脱いで、ベンチ兼テーブルの上で脚と足を思い切り伸ばしました。冷凍緑茶をゴクンと飲んで、静かに目を閉じます。

畦ヶ丸での休憩時間は30分を予定してきたので、25分経過したところで山頂に行きました。山頂にもベンチ兼テーブルがあります。でも、ひっそり静まり返っていました。誰かいたら、西沢の様子を尋ねようと思っていたのですが、今日は登山者が極端に少ないようです。本当はこの時点で、西沢沿いの登山路に難があることに気付くべきでした。

段落見出し軽快に、善六ノタワ

山頂からの下りは、いっそう軽快かつ爽快でした。緑の木々の葉を透かして、青い真夏の空が見えますが、ここは奥深い山の上、快適な空気に満ちています。時々ゴヨウツツジ(シロヤシオ)の木を目にしました。真っ白な花の咲く季節も、さぞ素晴しいことでしょう。木々の切れ目からは、権現山(箒沢)、檜洞丸、そして箱根の大涌谷の噴煙などを望めました。

まもなく善六ノタワに着こうという頃、すてきな休憩所がありました。リュックを下ろし、お茶のみ休憩にします。逆から登ってきた人々は、善六ノタワを越えた直後、ここでほっと一息つくことでしょう。善六ノタワは、両側が深く落ち込む、狭い渡り廊下のような道ですが、立ち木があるので、安心して渡れます。ちょっと、大倉尾根の金冷シ付近と似ていると思いました。

東海自然歩道は、この先の善六山(1119m)には行かず、右折して山腹を下るようになります。急傾斜ながら、整ったジグザグ道が膝にやさしく、ホイホイと下って行くと、ほっそりした沢がありました。「西沢出合2.7Km」と書かれた道標が立っています。その沢には砂の床が見えました。私は半ば本能的にリュックを下ろし、その渓流で手と顔を洗い、両手で水を掬って飲みました。1杯、2杯、3杯と、最高の味です。見上げれば、青空と白い雲を背景に、緑あざやかな混合樹林。できれば、今夜はここで幕営したいものだと思いました。

段落見出し滝めぐり、その三 本棚(落差約60m)

東海自然歩道は、その後も快適でした。尾根には涼風、難所にはハシゴ、ほどよい間隔で設けられた休憩所。やせ地に咲くヤマホタルブクロは風流な一輪挿し。朝の登山口に、「山は大荒れ」とありましたが、山そのものには平安しか感じられませんでした。そして、東海自然歩道が再び沢すじに入っても、流木や土砂崩れのような、荒れた様子は全く見当たらず、むしろ渓谷美がいっぱいと言わねばなりません。澄み切った水、無限の形を持つ岩、それらが出会って造り出される白いしぶき、谷間の案内役のようなミソサザイ。

本棚出合にやって来ました。リュックをデポして、身軽になって滝を見に行きます。ここは陸の上を歩いて行けるのがありがたいところ。出合から4分ほど歩くと、右手に滝が見えてきました。心を癒してくれそうな優美さがあります。ところが滝下まで行くと、その向かい側に勇壮豪快な滝がありました。迫力満点。胸がしびれそうです。見上げると滝の中ほどの高さに、ヤマユリが咲いていました。向かいの優美な滝は涸棚(からだな)というのだそうです。常に豊かな水があれば、雄滝、雌滝と呼ばれたかもしれません。

本棚出合に戻ると、タマアジサイが咲いているのに気付きました。なかなか風流に咲いているのでカメラを向けましたが、暗くてNGを連発。そうこうしていると、4~5名の男性グループがエネルギッシュに下りて来ました。沢装束です。この男性たちは、木橋が流されている箇所も、躊躇なく流れに踏み込み、どんどんと下って行きました。とても頼もしく思ったので、私もしばらく彼らの後を追って行きました。

段落見出し滝めぐり、その四 下棚(落差約40m)

下棚(しもんたな)出合で、沢装束のグループを見送りました。道標の根元にリュックをデポし、下棚を見に行きます。5分弱で滝に到着。これまた堂々たる滝で、落差、水量とも十分、水の落ちざまも美しく、落ち口から滝壺までよく整った姿です。この滝一つを見ただけでも、この日は満足したでしょう。この下棚がきょうの滝めぐりの最後なので、滝の霊気を吸い込むように、心ゆくまで眺めていました。

下棚出合に戻ると、16時20分でした。17時5分の新松田駅行きバスに、十分に間に合うな、と思いました。ところが10分ほど歩いたところで、登山路が対岸に移る箇所があり、沢に架かる木橋が流されていました。流れは激しく、深く、とても渡渉どころではありません。もしかして、きょう最大のピンチかな、と思いましたが、あの沢装束グループが先行しているので、どこかに迂回路があるかも知れません。試しに右岸を少し下ってみると、流れが広く、浅くなっていたので、楽々渡渉できました。

その下流でも、ほとんどの木橋が流されていました。そのたびに、浅瀬を探し、流れの緩い箇所を選んで渡渉することを繰り返します。幸い、すべての危険な箇所を迂回することができました。老婆心で書きますが、二本足での渡渉は、たとえ流れが膝下であっても体が不安定になりがちです。私は普段ストックを使いませんが、今回ばかりはシングルストックが頼もしい味方になりました。16時54分、西丹沢公園橋に到着。予定したバスに間に合いました。

段落見出し帰宅

西丹沢公園橋の途中に、今朝見たのと同じ注意書き「…非常識登山は…」が吊るされていました。納得です。17時5分発の新松田駅行きバスに乗った客は、私を含めてわずか3名でした。「当分の間」、西丹沢自然教室を基点として、安全に登れる山はないようです。ともあれ、幸せな気持ちで座席に着きました。きょうの畦ヶ丸と滝めぐりは、最後にプチ冒険のおまけまで附いて、大満足でした。いつものように無事に下山でき、あらためて感謝です。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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