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弁天御髪尾根

弁天御髪尾根、房総半島を望む

弁天御髪尾根より、房総半島を望む

弁天御髪尾根(べんてんおぐしおね)の歩行路は、地理院地図に破線で示されています。しかし、これは一般の登山道ではありません。

弁天御髪尾根は、ヤセ尾根、急斜面、ミニ岩場、展望地など、変化に富むのが魅力です。楽しく歩くためには、滑落、転落、道迷い、ヤマビルなどに、十分な注意が必要です。

バス停 神奈中バス: 伊勢原駅 → 日向薬師 登山口
バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ← 広沢寺温泉入口 登山口

地図 地理院地図: 上弁天 , 中弁天 , 下弁天

天気 弁天御髪尾根の天気: 伊勢原市 , 大山 , 日向薬師

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コース & タイム 鉄道駅 伊勢原駅 8:45 バス停== 9:11 日向薬師バス停 9:15 --- 9:23 日向薬師 9:35 --- 9:47 十字路(日向山分岐)9:52 --- 10:56 二ノ沢の頭 10:56 --- 11:14 大沢分岐(昼食)11:28 --- 11:46 すりばち広場 11:46 --- 12:10 見晴広場A 12:12 --- 12:21 見晴広場B 12:21 --- 12:33 弁天見晴 12:35 --- 12:54 上弁天 13:10 --- 13:23 中弁天 13:28 --- 13:42 下弁天 13:43 --- 13:53 見晴広場 13:53 --- 14:17 林道ゲート 14:17 --- 14:30 大釜弁財天 14:32 --- 14:52 広沢寺温泉(登山終了)15:55 --- 16:05 広沢寺温泉入口バス停 16:26 バス停== 17:05 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
見晴広場A、見晴広場B みはらしひろばA:標高 674m、みはらしひろばB:標高 推定657m 単独 
2015.11.27 全 5時間37分
 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢

前の週に、大山寺から矢草ノ頭(893m)を経て弁天御髪尾根に入ったのですが、見晴広場Bで時間切れとなり、弁天御髪尾根の半分ほどを歩き残してしまいました。今回は日向薬師から梅ノ木尾根を経由して、大沢分岐に行きました。その後、時間の余裕を持って弁天御髪尾根を歩き、大釜弁財天の近くで林道に下りました。風は強かったものの、終日快晴で視界はすこぶる良好。東京湾、相模湾を含め、広大な展望に恵まれ、たっぷりと道草を楽しんだ一日になりました。

段落見出し 日向薬師の思い出

伊勢原駅8時45分発、日向薬師行きのバスは、ガラガラに空いていました。終点まで乗って行ったのは、私を含めてわずか4名だけ。下車すると、私はヒガンバナの季節に設定される見学路に行きました。日向川の奥に鎮座する、神奈川県随一の霊峰、大山の雄姿を眺めます。真っ青な空を背に、晩秋の装いで聳える大山。きょうは何回、大山を見上げ、写真を撮ることでしょうか。

日向薬師は「平成の大修理」の真っ最中で、大きな萱葺き屋根の薬師堂は隠されています。左手に設けられた仮本堂に行くと、中高年の大きなグループが休憩していました。日向薬師の根強い人気は健在のようです。日向山の入口では、一見シャラのような、純白のツバキが咲いていました。梅林の入口には、豪快な1本のモミジ。真っ赤ではありませんが、緑色からうす紅色までのグラデーションが見事です。

ここから日向山への道は、私にとって、初めてヤマビルの被害にあった、印象深い道です。当時、まずヒガンバナを見て、日向山に登りました。落ち葉の道に、黒い小さな尺取虫のようなものが、たくさん蠢いていました。けれどもそれがヤマビルだとは知らず、全く気にしないで歩いたので、結果として大きな被害になりました。足首に食いついた、おぞましい生物に気付いたのは、山頂に着いてから。ヒルをすべてつぶすと、全速力で日向薬師に駆け下りました。

段落見出し 梅ノ木尾根の強い風

峠の十字路を左折して、梅ノ木尾根に進みます。道標によれば、十字路から180m西の地点から梅ノ木尾根に入るらしいのですが、それでは梅林との接点がありません。梅ノ木尾根の名の由来は何でしょうか。今の梅ノ木尾根は、常緑低木や常緑中高木が多いので、「日向」とは逆に暗い感じを受けます。尾根沿いのハイキングコースでは、常緑照葉樹のヤブツバキ、ドングリを落とすウラジロガシやコナラ、すっくと立ったモミなどが多く見られます。

伊勢原市の天気予報は、晴れですが、風が強いとのことでした。大山山頂では昼過ぎに風速9m/秒と予報されていましたが、きょう大山を目指す人々は、発汗と強風への対策をしているでしょうか。標高の低い梅ノ木尾根でも、激しい南風が吹き付けていました。もし樹木がなかったら、もっと寒かっただろうと思います。尾根道には幾つものアップダウンがあるにもかかわらず、汗をかいた感じがしませんでした。

浄発願寺奥の院まで1.0Kmと書かれた道標のすぐ先で、右手に展望があり、見晴広場Aと思われる峰と松並木の稜線を望めました。錦秋の山は太陽に照らされ、こちらから見えている南面では色鮮やかな紅葉が期待できそうです。そのすぐ先で、浄発願寺奥の院への道を左に分けました。これより先、公設の道標は見られなくなります。ところどころの仕事道に水源涵養林の標識があり、関係者以外立入り禁止と書かれているので、この尾根を関係者以外が歩くことは想定されているのでしょう。

段落見出し 梅ノ木尾根随一の展望地

さて、梅ノ木尾根が光彩を放つのは、ここから先です。ここに来るまでにも、樹間にチラチラと、金色に輝く相模湾を望めました。ハイキング道を分けた地点から始まる急勾配を登って行くと、暗かった尾根が明るくなります。遠く光る海や平野部を見渡せることで、心が高揚し、足がパワーアップしました。鮮やかな紅葉や黄葉も登場。標高が比較的低いせいか、まだ葉がほとんど傷んでいません。あたかも暗いトンネルを抜け出たような気分がしました。

二ノ沢の頭から檜林を2~3分歩くと、左手の視界が部分的に開けます。晴れ渡った空に、固い線と柔らかな線とを合わせ持つ大山を、一幅の絵のように望めました。その1~2分ほど先では、右手に展望があります。こちらも青い空に映える大山三峰山、経ヶ岳、見晴広場Aの峰などを、すっきりと望めました。梅ノ木尾根はこのあたりから、狭い露岩の渡り廊下のようになります。足下によく注意しながら進んで行きました。

大沢分岐のすぐ手前に、山林の作業員が二人いました。そのうちの一人は、先週梅ノ木尾根の上部で出会った人です。私のことを覚えていたのでしょう、あの時の親切な言葉へのお礼を言うと、にっこりされました。今月の初め、大月市の「悲しみの森」で、日本の山林の残念な現実を考えさせられましたが、若い林業従事者たちも、誰も見ていない山の中で頑張っているのですね。声援を送りたいと思います。

段落見出し 手のひらを太陽に!

大沢分岐で昼食を予定していましたが、風が強すぎたので、先週見て感じのよかった、落ち葉の多い斜面まで行きました。先週は普通に赤かったカエデの葉が、きょうは真っ赤。数が少ないので、大山寺や阿夫利神社のような豪華さはありませんが、色の純粋さや、枝振りの風雅さで優っています。ここは風が当たりません。私は落ち葉の斜面に腰を下ろし、リュックから温かいミルクティーを取り出しました。ちょっと遅めの昼食です。

「手のひらを太陽に」という歌があります。作詞者のやなせたかし氏は、暗い部屋で懐中電灯に手のひらをすかしたら、真っ赤に流れる自分の血潮が見えたと言います。これは私も子供の頃に、面白くて何度もやりました。もちろん、明るい屋外で手のひらを太陽にかざしても、赤い血潮は見えません。でもそれができるのが、カエデやモミジの葉です。今、紅葉も黄葉も、太陽光が透過して生き生きと輝いています。使命を果たし終えた葉が散る直前、葉の生涯を称えるように与えられた栄光のような気がします。

昼食を簡単に済ませると、真っ赤なカエデの葉を逆光で撮影しました。さて、大沢分岐から見晴広場Bまでは、先週歩いた道です。ここで記憶に残っている各所が、今回どう見えるか楽しみです。先週心地よく通過した落ち葉の斜面では、今回もすでに心地よい時間を過ごしました。そのすぐ先で、急勾配の下り坂とミニ岩場を通過します。落ち葉の積もった急坂は、ちょこちょこ小又で降りました。ミニ岩場はロープが設置されているので、慎重に通過すれば大丈夫です。

段落見出し 山から平野を経て海へ

植林帯に入るとすぐに東屋があります。これをよく見ると、屋根に落ちた雨水を樋で集めて、下のタンクに貯めるようになっていました。その水を何に使うのか、何も書いてないので分かりません。先へ進み、鹿や小動物の行き来を制限する鉄条網を右に見ながら下って行くと、直ぐに「すりばち広場」なる窪地に至りました。すりばちの底はほぼ乾いていましたが、大雨の直後などは水が溜まり、山の動物たちの水飲み場になりそうです。

次の小ピークには、美しいモミジの木があります。きょうは燦々と日差しを受け、先週見たときより、さらに美しかったのですが、葉の数はかなり減っていました。葉は柔和なオレンジ色ですが、紅くなる年もきっとあるでしょう。きょうの再会を祝して、その幹にタッチしました。

次の鞍部の直前で、右手に海を望め、先週晴れていなかったのが残念だと思った場所に来ました。きょうはきれいに晴れ渡り、三浦半島から真鶴半島にかけて、すっきり相模湾を見渡せます。右手の大山から躍動感をもって落ちて行く、梅ノ木尾根と大山南東尾根。見えないけれど、その向こうには浅間山や高取山を擁する大山南稜もあります。これらの尾根を通して、大山が湘南平野と相模湾に、脈々と生命を与えているように思えました。

段落見出し 見晴広場AとB

鞍部から松並木になります。多分松は植栽でしょう。足下一面に、広葉樹の落ち葉と松の落ち葉とがランダムに重なり合っています。この混交落ち葉道を登りきって、見晴広場Aに到着しました。朽ち倒れた道標にAの文字が読めます。周辺の樹木が育つ前は、素晴しい見晴場だったのでしょう。二ノ足林道方面から登ってくる人たちには、大山が大きくその姿を現わす場所です。見上げると、その北尾根から派生する、裸地尾根、石尊沢、ネクタイ尾根等に、くっきり陰影がついていました。12時10分、太陽は南中です。

先週勝手に「弁天椿」と名づけたヤブツバキは、見晴広場Bの50mほど手前でした。きょうは十分に明るく、その優しい花弁の色を撮影できます。ところで、常緑照葉樹のヤブツバキは、難燃性の樹木です。かつて人里では、震災時などに発生する大規模火災から、私たちの命を守ってくれる木として、タブノキなどと共によく植えられていました。防災・減災意識の高まった今こそまた、市街地にもたくさん植えて欲しく思います。実生で簡単に殖やせます。

見晴広場Bにやって来ました。ここで尾根が右と左に分かれます。先週来たときは薄暮の午後4時過ぎだったので、左の尾根を二ノ足林道へと安全に降りました。きょうは、ゆとりを持って右の尾根を降ります。いきなり急下降しますが、いよいよ弁天御髪尾根の圧巻、一気にテンションが上昇します。

段落見出し 弁天見晴から上弁天へ

落ち葉を踏んでも滑らないように、慎重に下りて行きました。少し下るとロープが設置されていたので、体重を預けてもよいことを確かめると、しっかりロープを握り、足場を確かめながら下りて行きました。「あいつとならここに来てもいいけど、あの彼は連れて来れないな」などと変な考えが脳裏に浮かびます。眺望は抜群、紅葉は秀麗。でも、景色を見ながら漫遊気分で歩ける場所ではありません。何度も足を止めては、風景に見入りました。

こんな下りが10分ほどあって、「弁天見晴」という展望地に下り立ちました。ここは尾根上の小さな平坦地で、一息つけます。遥か遠くに房総半島を置いて、東京湾と相模湾の海を望み、展望は雄大そのもの。弁天御髪尾根の続きには、上弁天と中弁天の二峰が、梅ノ木尾根の先には日向山が見えています。道標があり、右に下ると「ひょうたん広場、キャンプ場」、左は「見晴広場」、来た道は「山の神尾根~大山」と書いてありました。山の神尾根とはどこを指すのでしょうか?

弁天見晴の先も急峻な下りでした。いくつもの難所に、だれが設置してくれたのか、ありがたいロープが必ずありました。こんな場所で万一遭難したら、携帯電話を…“あれれ、忘れてきたぞ!! ” 単独行では一つの事故が生命の危険に直結しかねません。慎重さが何倍にも要求されます。今までずっと、地図と方位磁針と携帯電話は、登山のお守りであり、「三種の神器」でした。決して忘れたことはなかったのに!

段落見出し 上弁天から中弁天へ

上弁天に着くと、鹿柵を跨いだ脚立がありました。先ほどの弁天見晴よりも視界が広く、関東平野の南部を一望できます。北には男体・女体の筑波山。南には富山(とみさん:349m)の双耳峰。行く手の中弁天がぐっと近づき、その左に見城(みじょう:375m)が見えてきました。ここ上弁天でも尾根が二手に分かれますが、中弁天がすぐ近くに見えているので、真っ暗でなければ道を間違えることはないでしょう。

鹿柵の右側沿いに、中弁天に向かいます。仏果山や経ヶ岳の相州アルプスが高く見えるようになりました。すぐ左手の鐘ヶ嶽(561m)も堂々たる存在感を見せています。右手にはきょうの主役、大山の誇らしい姿。そのとき、足下南面に赤い茂みが見えました。カエデ類ではありません。よく見ると、それは何と、満開のツツジ! びっくりぽんです。冬の庭に狂い咲いたツツジを一、二輪見ることはよくありますが、満開は初めて。何という種でしょうか?

アカマツの立つ中弁天にやって来ました。2本のうち1本は、すでに枯れているようです。日当たりと風当たりの強い山頂で、松はどんな生涯を送ってきたのでしょうか。世代交代をさせるなら、そろそろ松苗の植え時かも知れません。来た道を振り返り、見晴広場Bへと続く紅葉の美しい尾根に目を凝らすと、弁天見晴と上弁天とをピンポイントで、何とか見つけることができました。

段落見出し 中弁天から下弁天へ

中弁天にも道標がありませんが、地図に従って右の尾根を下ります。これまでと比べてなだらかな尾根で、楽に歩けます。のんびり8分ほど歩いたら、平坦地に行き着きました。束の間ですが、ほっとします。左に延びる平坦地を進むと、右手に濃緑色の見城が大きく見えました。その向こうに伊勢原の市街地。左に青い玉川。右遠方に江ノ島とその展望灯台。房総と地続きになりそうな三浦半島。ここは、海を望めた最後の展望地でした。

この平坦地で、横たわっていた枯れ木の枝に足を引っ掛け、転倒してしまいました。何でもない場所で転んだのは、気が緩んだ証拠です。軟らかな土と落ち葉の上だったので、擦り傷一つ負わずに済みましたが、油断大敵。まだ登山は終っていません。この平坦地の突き当たりに土管が立っていて、「下弁天、P515」と書かれていました。

下弁天から、また急な下りになりました。尾根は幅広で、明るい広葉樹林です。積もった落ち葉で足を滑らせないよう、小又でトコトコと下りて行きました。尾根の脇には大きなヤマザクラ。クリスマスツリーのように均整の取れたモミの大木。赤い実を着けたシロダモ。やがてスキーのジャンプ台のように尾根が底を打って、少しだけ登り返すと、「見晴広場」と書かれた道標がありました。進行方向は「キャンプ場」、来た道は「すりばち広場」となっています。見晴らしは、あまり利きません。

段落見出し 植林を下って林道へ

尾根は東に伸びています。また鹿柵が現れました。地理院地図に示された道は、この先、尾根の途中で右折するようになっています。すると「キャンプ場」と書かれた小さな標識が立ち木にくくり付けられ、右を指していました。腰を屈めて倒れた鹿柵の門をくぐり、植林帯に入ります。ジグザグ道になっていたので喜んだのですが、それは始めのうちだけで、すぐに斜面を直滑降のように最短距離で下るようになりました。

滑っても谷に転落する恐れはなかったので、「砂走り」のように靴底をズルズル滑らせながらどんどん下って行きました。もちろん、いつでも停止できる速さを守ります。すると、かなり風化した古い階段が現れ、下の方に草地が見えてきました。そして尾根から数えて四つ目の鹿ゲートを通過すると、小広い林道に下り立ちました。これで山道は終わりです。午後2時16分。

この後、林道を下って弁天御髪尾根の末端を巻き、大釜弁財天を見物しました。滑岩(なめりいわ)の下には何人かのクライマーがいましたが、帰り支度をしている様子。二ノ足林道に入ると、どっしりした鐘ヶ嶽が明るい西日を受けていました。その南西稜が、とても優しい線で描かれているように見えます。きょうは、思ったほどには強い風を受けませんでした。もちろん、ヤマビルによる被害もありません。無事に下山できて感謝です。最後に広沢寺温泉で一風呂浴びて、気分良く帰宅しました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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