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大室山(茅ノ尾根・東尾根)

大室山東尾根より望む、蛭ヶ岳と丹沢の山々

大室山東尾根より望む、蛭ヶ岳と丹沢の山々

大室山は、存在感の大きな山です。独自の大きな山体、美しいブナ林、シロヤシオツツジ、個性豊かな幾つもの登山路などを持っています。

バス停 神奈中バス: 橋本駅 → 三ケ木
バス停 神奈中バス: 三ケ木 → 月夜野
バス停 富士急山梨バス: 月夜野 → 久保吊橋 登山口
バス停 神奈中バス: 三ケ木 ← 神ノ川入口 登山口
バス停 神奈中バス: 橋本駅 ← 三ケ木

地図 地理院地図: 大室山

天気 大室山の天気: 檜洞丸 , 西丹沢

くし 津久井三姫物語


コース & タイム 鉄道駅橋本駅 6:20 バス停 == 6:51 三ケ木 6:55 バス停 === 7:36 月夜野 7:50 バス停=== 8:01 <久保吊橋> 8:02 --- 8:06 登山口 8:11 --- 9:05 久保分岐 9:10 --- 10:33 展望地 10:44 --- 11:32 大室山 12:20 --- 13:04 神ノ川分岐 13:04 --- 13:55 鐘撞山 13:57 --- 14:25 折花分岐(一旦下ってまた戻る) 14:32 --- 14:40 空き缶と私製道標 14:40 --- (デジカメ紛失でタイムロス10分) --- 15:19 神ノ川キャンプ場 15:22 --- 15:56 神ノ川入口バス停 バス停 16:18 == 16:50 三ケ木 17:00 == 17:55 橋本駅鉄道駅
※歩行時間には小休止と写真撮影の時間とロスタイムが含まれています。
大室山、鐘撞山 おおむろやま:標高 1587.4m、かねつきやま:標高 900.2m
単独 2015.10.03 全 7時間54分 満足度:❀❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

10月3日(土)北丹沢の大室山に行って来ました。最高気温が27℃と予報された夏日でしたが、北面の茅ノ尾根は涼しく、木漏れ日の樹林を快適に登れました。下山は眺望に優れた東尾根。鐘撞山では記念の鐘を撞きました。ただ、どちらの尾根も登山道として整備されていません。踏み跡を拾いながら歩く、準バリエーションルートと見做すのがよいと思います。

段落見出しバスを3台乗り継いで

道志村に公共交通機関を利用して出入りするのは、大変に不便です。今回私が使ったバス便は、土曜日の朝限定で利用できるものです。しかし土曜日午後の帰りの便は、月夜野16時15分発の1本しかありません。山では何が起こるか分からないので、場合によっては大室山から西丹沢自然教室に下山することも頭に入れておきます。

まず神奈中バスを乗り継いで、神奈川県と山梨県の境にある月夜野へ行きました。月夜野からは富士急山梨バスの長又行きに乗ります。乗り込むと運転士さんから、「土曜日の車両は、車内アナウンスがありません」と言われました。昔懐かし、昭和ムードいっぱいのバスです。「どちらまで?」と尋ねられたので、「久保吊橋」と答えたら、「330円です」と言われました。乗客は私一人だけです。そして、久保バス停ではなく、久保吊橋の真ん前でバスを停めてくれました。

吊橋の入口には、きれいそうなトイレがあります。「大室山山頂、約3時間30分」と書かれた道標、「一度に10人以上渡らないこと」という注意書き、「ここは横浜市の水源です!」という表示板などもありました。吊橋の半ばまで行って、下を流れる道志川を見下ろすと、かなりの高度感があります。振り返って見上げると、ムギチロをはじめ、道志の山並みを望めました。

段落見出し変化する林相を楽しみつつ

大室山の登山口は、吊橋のすぐ近くでした。リュックを下ろし、準備運動を念入りにします。念のため熊鈴もつけました。これから単純標高差で1120m余りをひたすら登ります。表丹沢の大倉から塔ノ岳に登るのと大体同じでしょう。でもこちらはアップダウンのほとんどない一本調子の登り。展望も期待できません。多少は変化があり、眺望もある大倉尾根をバカ尾根と呼ぶのはいかがなものかと思います。

林道歩きをせず、富士登山のようにいきなり登り始めるので、体が有酸素運動モードに切り替わるまでゆっくりと歩いて行きます。地面には広葉樹の褐色の落ち葉の上に、緑色の落ち葉も目立ちました。前日の大雨と強風で叩き落されたのでしょう。空気はひんやりとして、多少の湿気はあるものの、いい感じです。北面ですが、けっこう木漏れ日があって、暗い雰囲気ではありません。

やがて、すらりとした杉の立ち並ぶ植林帯になり、テレビの共同受信アンテナが立つところでは、地デジ波を通すために東面をわずかに伐採してありました。焼山あたりが望めます。尾根上に大きなモミの木が2本立っていましたが、杉の植林のときに夫婦モミとして残されたものかも知れません。体がほどよく温まった頃、大渡からの尾根道を左から合わせました。道志村役場の道標があります。ここで小休止。

段落見出しツチガキ、シバグリ、ドングリ

地面にツチグリ ツチガキがたくさんありました。キノコというより、星の子と言いたい形をしています。真ん中の丸いふくらみを指先でチョンと叩いたら、黒っぽい煙を噴き出しました。英語に "mashrooms after a rain" という表現があります。「雨後の筍」と同じ意味ですが、これ以降も、様々なキノコが山中に見られました。

林相は、いつしか檜林に変わっていました。地面が2~3メートルにわたって穿られたような跡が所々に見られましたが、恐らく何か大きな動物がやったのでしょう。何が何をしたのでしょうか? イノシシやクマとは出遭いたくありません。よくよく注意して歩くことにします。地面にはシバグリのほか、ドングリ類もたくさん落ちていました。山の動物たちが、寒い冬に備えて栄養を蓄える季節です。

尾根には時々松も見られましたが、何と言ってもブナが増えてきました。左前方から明るい太陽光が差し込み、いい雰囲気です。見上げれば、青空を背景に木々の葉がステンドグラスのように緑の光を透過させ、葉に映る葉の影がわずかに揺れ動いていました。

段落見出し秋色のグラデーション

10時頃、地形図に示された1131m地点あたりは、傾斜が緩やかです。久々に道志村役場の道標がありました。「大室山山頂120分⇒」となっています。「ええっ、この先まだ2時間もかかるのか?!」ところがこれと向かい合うように、とても古びた木の道標があり、「至大室山1時間」と彫ってありました。その上に小さく「1.5」と落書きも見られます。まあ、およそ1~2時間ということなのでしょう。

10時半頃、左手に蛭ヶ岳を望める貴重な場所がありました。ここぞとばかり、休憩にします。蛭ヶ岳から袖平山にかけての稜線が、吊尾根のように見えます。今頃、姫次から大室山や富士山を眺めている人もいることでしょう。「富士隠し」というあだ名を持つ大室山ですが、富士山の引き立て役のように見えることだってあります。そうでなくても、大室山の持つどっしり感が、私は好きです。

標高1400mあたりから、尾根は幅広に、傾斜は緩やかに、ブナは大きくなりました。私の好きなカラマツも見られます。モミジやカエデ類の葉は色づき始めていて、緑から黄へ、黄から赤へのグラデーションが、太陽光の下で輝いています。初めて見るムシカリの紅葉にも新鮮な驚きがありました。山頂まであと2~3分の距離なのに、この北面の楽園を訪れる人は少ないかと思います。

段落見出し静かな秋の大室山

11時32分、山頂に到着しました。先客は2人だけ。展望は利きませんが、静かな好ましい山頂だと思いました。休憩する前に富士山を探しに、加入道山の方向に少し歩いてみましょう。300mほど南西に進むと、西の肩と呼ばれる場所で、犬越路への道が分岐しています。ここにテーブルが1脚あって、1組の夫婦らしい男女が休憩していました。さらに木道を下りて行くと、待望の富士山が見えました。冠雪はまだです。富士山の手前には、色付き始めた1543m峰。初秋の一幅をカメラに収めます。

南面には西丹沢の山並みを望めました。その名も中川なる川を挟み、生きているように脈々と連なっています。中川左岸には檜洞丸から延びる石棚山稜と同角山稜、右岸には二つの権現山、畦ヶ丸、屏風岩山、はるか遠く高く箱根の山々、右に富士山。北面は眼下に道志の山並み、その背後に小金沢連嶺と奥秩父。遠くうっすらと八ヶ岳も望めました。

きょうは、眺望と撮影にあまり時間を費やせません。山頂に戻って、お茶と菓子パンを口に入れました。気が付くと、ズボンの右裾にピンクの斑点がポツポツと染み付いています。しまった、油断してヤマビルにやられました。あの北面のブナの楽園で立ち止まり、道草に耽っていた時に吸い付かれたのでしょうか。吸血したヒルは、本来なら潰さねばなりません。悔しいけれど、後の祭りです。

段落見出し急峻な東尾根から、雄大なパノラマ

12時20分、下山の途に就きました。始めはボウボウと伸びた草叢を鹿柵に沿って下ります。10分ほど下ると崩落地の上に立ちました。視界がドラマチックに広がります。檜洞丸を中心とする丹沢主稜と、蛭ヶ岳を本丸とする丹沢主脈の雄大なパノラマが展開しました(上の写真)。「丹沢 大室山」で画像検索しても、こんな風景は出てきません。ここからの展望が、この日最大の感動となって記憶に焼きつきました。

崩落地の先は、背の低い笹原になっていました。すぐに急峻で幅の狭い登山路が続きます。トラロープも設置されてはいますが、転倒、転落、踏み外しのないよう、足下をよく見て慎重に進まねばなりません。でも10分ほど下ると平坦な道になり、束の間ですがホッとすることができました。さらに5分ほどで、ススキの草原が出現。ここもすばらしい展望地です。蛭ヶ岳から左に伸びる稜線の先に袖平山、その手前に下りて来るのは風巻ノ頭、白い川原の神ノ川(かんのがわ)等々。

やがて、尾根の南面が針葉樹の植林、北面が広葉樹の自然林になりました。緑の下草もあって、健康的な雰囲気です。山頂から正味40分ほどで、尾根の分岐点にやって来ました。右は「神ノ川ヒュッテ」と書かれた私製の道標があります。鐘撞山へは左に進みます。その先から道が険しくなり始めました。不安定な石がいつ落ちて来るかも分からないような、悪路です。もし前後に何人かが歩いていれば、恐怖の山道でしょう。この悪路で予想外に時間を費やしました。

段落見出し鐘撞山の鐘の音

「神ノ川ヒュッテ」への分岐から40分ほどで、再び尾根が分岐する934m地点にやって来ました。鐘撞山に向かう尾根は左です。幸い、この分岐点あたりから歩き易くなりました。そして10分ほど歩いて、左側が明るく開けてくると、鐘撞山でした。開放感のある山頂に、独特の形をした半鐘、丸木のベンチとテーブル、石の祠などがあります。振り返って大室山を見上げると、すでに遥か高くなった山頂が、どことなく神々しく見えました。

鐘を打ち鳴らす小槌が用意されています。鳴らせば何か良いことがありそうな気がして、二度打ち鳴らしました。鐘は、高調波をいくつか含んで、カナでは表現できない音を発しました。その長い余韻のある響きは、大室山と共鳴し、天まで上って行ったかも知れません。三度鳴らすと、何故かここには二度と来ることがないような気がして、二度にしておきました。

鐘撞山では、冷たいお茶だけの休憩にしました。もっと時間にゆとりがあれば、コーヒーやお菓子などをゆっくりと味わいたい場所です。またいつかここに来て、鐘を鳴らしましょう。もしかしたら、折花姫の慰霊になるかも知れません。鐘の音は、キリスト教会のベル形の鐘よりも、仏教寺院の釣鐘に近いと思います。⇒ 鐘の音(YouTube)

段落見出し油断大敵!

鐘撞山から25分ほど下った頃、道が尾根から右に逸れて、神ノ川に向かって急下降するようになりました。折花橋に降りる道でしょう。しばらく進んだのですが、下り方があまりに急激なので、果たして尾根に戻れるだろうか?と心配になりました。折花橋まで下りてしまうと、バス停までの所要時間が長くなります。ここは安全のため、尾根に戻ることにしました。

尾根に戻りましたが、踏み跡がありません。それでも他に尾根はないので、迷わず進んで行きます。最近通った人はいないらしく、しばしばクモの巣が顔に引っかかりました。669m地点で尾根が左右に分かれますが、右の尾根に進みます。このあたりから踏み跡がはっきりしてきました。しばらく下ると、立ち木にコーヒーの空き缶と、「ヒメサユリ山ノ会」と読める私製の小さな標識がくくり付けてありました。

まもなく平坦地に差しかかろうという所で、右足が何かに引っかかり、前のめりに倒れそうになりました。下り坂なので勢いがあります。幸い右側に立ち木があったので、とっさに右腕でその幹を抱えました。その結果、体は前方に滑りましたが、仰向けに倒れて止まりました。右足が何に引っかかったのか、見ても分かりませんでしたが、おそらく左足が踏んだ木の枝だろうと思います。登山は最後の最後まで気を引き締めて歩かねばなりません。

段落見出しデジカメがない!

腕まくりをしていたので、赤い擦り傷がいくつかできました。でも大したことにならずに済んで、本当に感謝です。ところが、しばらく進んだ頃、首に掛けていたはずのデジカメがないことに、ふと気付きました。きょう撮影した写真も全部カメラに入っています。即Uターンして、先ほどの現場に引き返しました。幸いカメラは、私が抱えた木の根元に落ちていました。またまた感謝です。失った時間は、10分ほどで済みました。

その後、クマザサの茂みを歩くようになりました。尾根の末端が近づいてきます。今は使われていないであろうVHFテレビの共同受信アンテナの脇を過ぎると、道が尾根から外れ、右手の神ノ川へと下るようになりました。枝越しに川の流れが見え、キャンプ場から、楽しそうな人の声も聞こえてきます。登山路の終点近く、一部足場の悪い箇所があり、慎重に通過しました。そして、15時29分、神ノ川左岸に下り立ちました。

バスに乗り遅れてはいけないので、急ぎ足で国道に向かいます。途中でババア宮の前を通りました。ババアというのは折花姫の世話をしていたばあやのことです。きょうは先を急ぎますが、次の機会にジジイ宮とセットで見学したいと思います。15時56分、バスの時刻まで20分を残し、神ノ川入口バス停に到着しました。腰を下ろせる丸木が1個だけあります。でも車やバイクがビュンビュン走るので居心地が悪く、来た道を戻って、柿畑の石段に腰を下ろしました。

段落見出し柿畑の感慨

柿畑から、改めて大室山を眺めました。半逆光の西日を受け、銀色に輝く大きな山。あの高い山に行って来たんだなあと、どこか信じられない不思議な想いが湧いてきました。リュックを開き、残ったお茶を飲みます。腕の擦り傷の一つ一つに抗生物質の軟膏を塗り、傷バンドテープを貼りました。柿は収穫する人がいないのか、たくさん地面に落ちていました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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