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椿丸

椿丸より望む丹沢主稜と主脈

椿丸より望む丹沢主稜と主脈

椿丸は、山頂直下に広大な展望と、ミツマタの群落があります。訪れる人は少なく、深山らしい静寂さと行き難さが、プチ冒険を好む人々にとって魅力となっています。

バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 → 細川橋 登山口
バス停 富士急湘南バス: 谷峨駅 ← 浅瀬入口 登山口

地図 地理院地図: 椿丸

天気 椿丸の天気: 山北町 , 世附権現山 , 丹沢湖


コース & タイム 鉄道駅谷峨駅 バス停 7:46 == 8:10 細川橋バス停 8:11 --- 9:13 二本杉峠 9:19 --- 10:16 千鳥橋 10:32 --- 10:52 法行沢林道起点 10:53 --- 12:08 伐採された尾根取り付き 12:09 --- 12:38 椿丸 13:17 --- 13:44 838m峰の西の小峰 13:44 --- 14:20 795m峰の西の小峰 14:27 --- 14:41 780m峰巻き始め 14:41 --- 15:07 水源の森林づくり看板 15:07 --- 15:53 山道終点(林道カーブミラー) 15:54 --- 15:59 夕滝見物 16:00 --- 16:07 浅瀬橋 16:07 --- 17:10 浅瀬入口バス停 バス停 17:27 == 17:48 谷峨駅鉄道駅
※歩行時間には道草と写真撮影の時間が含まれています。
椿丸 つばきまる:標高 902m 単独 2016.3.17 全 8時間59分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

3月17日、ミツマタの開花を見計らって、西丹沢の椿丸に行って来ました。この山域に入るのは初めてなので、なるべく分かり易いルートを歩こうと思い、標高740mまで続く法行沢林道を登りました。椿丸山頂からは、慎重に尾根すじを辿って、浅瀬橋に下りました。名づけて、椿丸入門コース。考えられる最大の危険は、道迷いとツキノワグマです。危険を最小化するために、熊鈴を着用し、頻繁に地図を開きました。

段落見出し 谷峨駅から細川橋へ

今回は、二本杉峠から千鳥橋への道がどれほど使えるか、歩いて確かめたいので、少し遠回りになりますが、上ノ原登山口から入山します。新松田駅前にいた西丹沢行きのバスに乗客が少ないのを見て、松田駅ホームに行きました。富士山がよく見えるホームです。乗った電車が谷峨駅に近づくと、電車の最後尾に移動し、下車すると切符を車掌さんに手渡し、駅前のバス乗り場に急ぎました。ここは、もうすっかり慣れた手順です。

バスは神縄(かみなわ)トンネルから玄倉まで往復しますが、私はこれが楽しみです。玄倉でバスが折り返すとき、丹沢湖の上に立つ富士山がとても大きく見えるのです。きょうも、真っ白な富士山が、神々しく座している姿に心を打たれました。玄倉では小学生が5人乗りましたが、平日は通学用にダイヤが組まれているのでしょう。

浅瀬入口で、登山姿の5人が下車。ミツバ岳や権現山に向かうのだと思います。学校入口では、先生らしい男性が生徒たちを待っていました。そして細川橋で下車したのは私だけ。きょうは下山するまで、誰とも出合わないかもしれない、と予感しました。行く手の斜面には、黄色いミツマタの群落が見えています。同じ春の色でも、菜の花畑のようなみずみずしい黄色ではなく、可愛らしくも耐久力を感じさせる黄色です。

段落見出し 上ノ原登山口から二本杉峠へスイスイ

二本杉峠までは、世附権現山への整備された登山道を歩きます。道標も多く、これを見て権現山への距離から1.1Kmを引くと、二本杉峠までの距離になります。人里を抜けるまで、見ごろを迎えた白梅を楽しむことができました。実を採るための品種で、素朴な花が好きです。杉林に入ると、無数の雄花が落ちていました。花粉の盛りは過ぎたと思いますが、まだまだ大量に飛散しています。幸い、私は花粉症にはなりにくいようです。

山腹にはミツマタの群落があります。実は、きょうのルート選びにあたって、目論見を持ってきました。ミツマタの花は、登りでよく楽しめます。花が下向きに咲くので、上を見上げると鮮やかな黄色が目に入りますが、見下ろすと白い裏側を見ることになるからです。下りで鮮やかな花の群落を見たければ、後ろ髪を引かれるように振り返らなければなりません。この目論見は、椿丸へ登り詰める尾根でも大当たりでした。

二本杉峠へは、正味1時間で着きました。「小御嶽山大権現」と彫られた石柱と、小さな埴輪風の像に、太陽のスポットライトが当たっています。よく見ると、この像は妊婦のようで、安産祈願かも知れません。首に編み物の襟巻をしていました。ここで、リュックを下ろし、念入りに準備運動をします。特に足にストレッチを施し、可動性をよくしました。ここから千鳥橋への下りは、山と高原地図では危険マークが記され、「初心者通行禁止」となっています。

段落見出し 二本杉峠から千鳥橋へ、ヤバい道

二本杉峠の道標に、千鳥橋を指す腕木はありません。ただ、立ち木に、赤ペンキで「ちどり」と書いてありました。気を引き締めて、その方向に下り始めます。はじめは普通の登山道と変わりないような道がついていました。杉木立の向こうに、大きな富士山が透けて見えます。間もなく、道というより、踏み跡になりました。最近に人が歩いたような形跡はありません。でも踏み跡が残っていたので、最後まで迷いは全くありませんでした。地理院地図の破線どおりです。

このルートが「初心者通行禁止」となっているのは、滑落や転落の危険があるからだと思います。両岸が崩壊した涸れ沢を越えたり、深い谷に沿う、ほとんど風化したトラバースなど、もし一般登山道なら鎖やロープが設置されるだろう、と思える箇所が多くありました。部分的には、のどかに歩ける箇所もあります。心地よいせせらぎを聞き、行く手の富士山を望んだりとか。しかし総じて危険箇所が多く、決して何度も歩きたいようなルートではありませんでした。

千鳥橋が近くなると、初めてトラロープがあり、そこから俄然歩きやすくなりました。地理院地図の破線どおりに、右の尾根の先を回り込み、どんどん進みます。左前方に大又沢の河原と千鳥橋が見えてきました。もう一度小さな沢を渡ります。そして「あかまつ採種園」の手前を左に下りると、千鳥橋のたもとに飛び出しました。やれやれ、ほっとします。二本杉峠・千鳥橋間は、思った以上の難路でした。地蔵平への近道としてどうかな、と思ったのですが、考え直します。

段落見出し 大又沢林道のんびり

千鳥橋のすぐ上手に、ちょっと素敵な園地があります。ここで休憩するのを楽しみにして来ました。まず、小さな池のほとりに腰を下ろします。そして大又沢と千鳥橋を眺めながら、温かい紅茶を飲み、半額で買ってきた菓子パンを食べました。ここは、天然の園地なのか、人工の園地なのか分かりませんが、のどかな雰囲気があり、休憩地としてお奨めです。近くには物置小屋風の建物があり、非常時には風雨をしのぐこともできそうです。

さて、千鳥橋を後に、大又沢林道を浅瀬方向に少し進むと、大又沢ダムが見えてきました。堆積した砂が白いビーチを形づくっています。限りなく透明な、青緑色の水を湛えるダム湖。湖水がゆらゆら、きらきら輝いて、とてもきれいです。ダムの端に植えられた赤い椿と白い梅が、共にきれいに咲いていました。

千鳥橋から、のんびり20分ほど歩いて、法行沢林道の起点にやって来ました。「昭和60年度 新設工事起点」と書かれた銘板があります。ここには、「法行棚沢取水口入口」と書かれた標識もありますが、丹沢山塊の地下に長大な水路が張り巡らされていることには驚かされます。ちなみに、大又沢ダムを出た水は、ミツバ岳と権現山を結ぶ尾根の下を通って、丹沢湖畔の落合発電所で使われます。「新設工事起点」の銘板は、その後も年度を変えて、数か所に立っていました。

段落見出し 法行沢林道てくてく

法行沢林道に入って3分ほどで、別の林道を右に分けました。法行棚沢取水口への道でしょうか。また、今回お守りのつもりで持ってきた「西丹沢登山詳細図」によれば、ここから富士見峠(標高約880m)に通じるバリエーションルートがあります。きょうのような晴れた日に行けば、富士山がよく見えるのかもしれません。

傾斜の緩い法行沢林道をてくてくと登って行くと、道端にソーラーパネルがあり、その先に広々とした平地がありました。おそらく資材置き場として使われた場所なのでしょう。ところがさらに3分ほど進むと、林道の路肩が大きく崩落し、道幅が半分くらいしか残っていませんでした。二輪車以外の車両は通れません。そしてその先でも、大規模に林道が法行沢に崩れ落ちていました。ただ歩く分には、全く問題ありません。

この林道では、越冬した蝶たちと出遭いました。最も多かったのはテングチョウ。他に、一瞥で同定できるルリタテハや、瞬時には見分けられないキタテハらしい蝶もいました。沿線にスミレや春の草花は見られませんでしたが、多分ミツマタの花から吸蜜しているのでしょう。軽く汗ばんだので、私も上着を脱ぎ、腕まくりして歩きました。小鳥たちの声もよく響いています。左に見下ろす法行沢は、時々ハッとするような美しさを見せていました。

段落見出し 眺望抜群の尾根へ

法行沢林道を1時間ほど歩くと、銘板のない橋を渡り、東へと向きを変えます。ここで初めて林道の全幅が崩落していました。トラロープが設置されていて、歩くのは問題ありません。ここを越えると、林道が右に曲がり、西に向くところで、地図から林道が消えます。伐採された、ほぼ裸の尾根が目の前に現れました。この明るい尾根は、上部でゆっくりと南西方向にカーブし、椿丸主尾根と870m峰で接続します。尾根上には黄色いミツマタの群落も見えていました。

この伐採された尾根は、登り始めると、すこぶる見晴らしがよく、まだ白い雪の残る丹沢の峰々を、ずらりと望めました。右の世附権現山から、屏風岩山を経て、左の畦ヶ丸へと続く稜線も、手に取るようです。その稜線の最も低くなるところが、二本杉峠。3時間前に越えてきたばかりですが、こうして振り返り見ると感慨があります。この尾根には、きれいなミツマタの群落もあって、大道草を食いました。決して急いで歩き抜けたくはない、花と展望の尾根だったのです。

このすてきな尾根を登り詰め、右手の鹿柵(網)を抜けてわずかに登ると、椿丸の主尾根に乗りました。右に一旦下って、登り返します。ようやく左手に山頂が見えました。細川橋を発ってから、すでに4時間半が経過しています。山頂には公設の山頂標はなく、私製の可愛らしい標識が立ち木に括り付けられているだけでした。西には樹木の枝を透かして、大きな富士山が見えます。山頂のすぐ先が明るく開けていて、自ずと足がそちらに動いて行きました。

段落見出し 丹沢屈指の展望

まず目に飛び込んできたのは、北面の大栂(1204m)です。「はじめまして、今後よろしく。」大栂の背後に鎮座するのは、菰釣山(1379m)。将来いつか、東西にも、南北にも、縦走したい山域です。そして東面は、先ほども眺めた、丹沢主脈と主稜の峰々。間もなく解け切る春の雪が惜しまれます。こうして眺めると、石棚山稜と同角山稜も歩かなければ、という思いが湧いてきました。そして眼下の斜面にはミツマタの大群落。木に春の花咲く椿丸、来て本当によかった!

ベンチの類は全くなかったので、落ち葉の上に腰を下ろすと、下地は湿っていました。展望を楽しみながら、温かい紅茶を飲みます。こんな時、自分の他に誰もいないのは、少々残念です。計画では午後1時に山頂を辞すつもりでしたが、20分も超過してから下山の途に就きました。「西丹沢登山詳細図」には、浅瀬へのルートが紫の線で記されています。地理院地図を見ても、尾根すじはこの線しか考えられません。どこかで道を間違えて進めば、アウトだということです。

いつものように、「山と高原地図 丹沢」も持ってきました。こちらは山座同定に役立つので、周辺の山々を見ながら、大まかな現在地や、進んでいる方向を確かめることができます。「詳細図」は両面印刷なので、この用途では使い勝手があまりよくありません。大きく山域を把握する地図と、細部をより正確に見るための地図の違いです。リュックに熊鈴を付け、さあ、オリエンテーリングの開始です。

段落見出し 下山は順調に

椿丸から浅瀬に下る場合のポイントを記しておきましょう。 

何度も立ち止まり、地図でルートを確認しました。幸い、常に太陽が方位を教えてくれ、山の冬枯れで見通しも良好。山頂から正味2時間半ほどで、浅瀬橋近くの林道に下り立ちました。順調に下山できたことを感謝し、この機会に近くの夕滝を見に行きます。川沿いに西へ5分歩くと、あたかも空から流れ出るかのような、長い滝を見ることができました。遠目なので臨場感には欠けるのですが、話の種にはなるでしょう。きょうは朝思った通り、山で誰とも出合いませんでした。

浅瀬橋から浅瀬入口バス停までは、約1時間です。今回は変化を付けるため、世附川橋から世附大橋まで、右岸の道を歩きました。ミツバ岳と権現山を眺めるのに、もってこいのコースです。川岸ではキラキラ輝く川面を背景に、ダンコウバイやフサザクラの花がきれいでした。最後の難所は、私の苦手な落合隧道。約500mもある長いトンネルで、自動車が走ると恐ろしげな轟音が鳴り響きます。幸い、私が通り抜ける間、自動車は通りませんでした。

段落見出し 富士山フィナーレ

帰りのバスは、玄倉まで私一人の貸し切り状態でした。玄倉で折り返すとき、朝と同じ構図で大きな富士山が見えました。西の空から後光を浴びた富士山は、完全なシルエットになり、丹沢湖を前景として一幅の絵になっていました。

木の葉ライン

↓ 紙芝居



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