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栂立ノ頭 (スノーハイク)

栂立ノ頭

栂立ノ頭

栂立(つがだち)尾根は、登山者の興味の対象として、評価が分かれるようです。眺望の乏しいこと、鹿柵(植生保護柵)が続くこと、道標がないことなどの理由で、興味が減退し、あるいはそそられのでしょう。

金冷シより望む栂立尾根
鍋嵐北尾根より望む栂立尾根

バス停 神奈中バス: 本厚木駅 ⇔ 宮ヶ瀬 登山口

地図 地理院地図: 栂立ノ頭

天気 栂立尾根の天気: 清川村 , 宮ヶ瀬

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コース & タイム 鉄道駅 本厚木駅 7:40 バス停 == 8:36 宮ヶ瀬 8:37 --- 9:20 金沢橋 9:31 --- 10:21 新多摩線32号鉄塔 10:30 --- 10:32 タロベエ峰 10:32 --- 11:29 六百沢ノ頭 11:45 --- 12:28 栂立ノ頭 12:42 --- 13:11 六百沢ノ頭 13:11 --- 13:48 タロベエ峰 13:49 --- 13:51 新多摩線32号鉄塔 14:06(以後道間違い)--- 14:50 宮ヶ瀬金沢左岸の造林公社看板 15:00 ---(宮ヶ瀬金沢渡渉 + 金沢林道歩行)--- 15:21 金沢林道崩落地点 15:32 --- 15:37 金沢橋 15:37 ---16:33 宮ヶ瀬バス停 16:50 バス停 == 17:49 本厚木駅 鉄道駅
※歩行時間には写真撮影と道間違いと地図読みの時間が含まれています。
栂立ノ頭 つがだちのあたま:標高 849m 単独  2016.1.22 全 7時間56分 満足度:❀❀❀ ホネオレ度:❢❢❢

1月22日(金)、積雪の栂立尾根を歩いてきました。宮ヶ瀬から金沢橋を経由して、栂立ノ頭までのピストンです。金沢橋までは早戸川林道を歩き、アイゼン不用。山道に入ると、アイゼンなしでは歩けないほど雪が固くしまっていました。急傾斜も多くあります。標高600mあたりから上では雪が柔らかく、しばしば足首が潜るほどでした。下山の最後の部分では道を間違える大失敗。プチ冒険のおまけが付きました。

段落見出し 宮ヶ瀬から金沢橋へ

わが家の周辺では、18日に降った雪が、道路わきや公園の日陰にまだ残っています。固められた雪は、容易に融けようとしません。丹沢の雪は、どうなったでしょうか? 「終日晴れ」の予報が出た22日、まだ歩いたことのない栂立尾根に行ってみることにしました。積雪期は登山道が分かりにくくなるので、単独者が初めて歩くのには向きません。けれども栂立尾根に限っては、登山路が尾根上を走る鹿柵(植生保護柵)とイヤになるほど一致しているので大丈夫でしょう。

バスを終点の宮ヶ瀬で下りて、早戸川林道に進んだのは私だけでした。舗装された林道の表面で、融けた雪が凍結してツルツルしています。滑ったらスケーティングをするつもりで歩いて行きました。青い空を映す宮ヶ瀬湖は、空よりも青く、鏡面のように滑らか。春ノ木丸北尾根の突端を回り込み、汁垂橋(しるたればし)と汁垂隧道を通過し、さらにもう一つの岬を回り込みます。宮ヶ瀬湖の最奥部では、丹沢三峰から派生するいくつかの尾根を水面に映していました。

金沢橋では二人の男性が大型カメラと三脚を置いて、野鳥の撮影チャンスを待っていました。橋の中ほどには、長い釣り糸を垂らす男性が一人。長いロープを付けた魚篭は、まだ橋の上です。この人は、下山後にもまだ同じ場所で釣っていました。この金沢橋を渡り切ると、栂立尾根の取り付きです。標識やテープなど人工の目印はありません。ここで私は入念に準備運動を行いました。そして、軽アイゼンを装着。準備完了です。

段落見出し 栂立尾根を登る

登山口に誰かが置いていった頑丈そうな天然のストック(木の枝)を拾い上げました。登り始め、いきなりヤブが待ち受けます。カヤトの先で目を突かないように気を付けながらヤブをかき分け、積雪で踏み跡の分からなくなった斜面を適当に登ること7~8分、栂立尾根上の小さな鞍部に乗りました。西面がわずかに開け、送電線と東海自然歩道の一部が望めます。これより本間ノ頭まで続く栂立尾根は、多少の屈曲はありますが、基本的に南西方向に上って行きます。

積雪はよく締まっていました。軽アイゼンの爪がよく利きます。雪の上には針葉樹の小枝や枯葉が落ち、見た目はあまりきれいとは言えません。樹木の枝先から落ちる滴が穿った、同心円状のくぼみが無数に見られました。人の足跡は見られませんでしたが、むしろ動物の足跡に気を使います。ほとんどは鹿の足跡ばかりですが、熊の足跡を見逃してはなりません。

10時前後、左手の谷から土砂崩れのような轟音が聞こえました。はじめ大型ダンプカーが荷台を傾けて砂利を下ろしたのかと思いましたが、林道のゲートは閉じていたし、音が聞こえたのは1回だけだったので、不思議に思いました。帰りに間違えて歩いた金沢林道に大きな崩落箇所がありましたが、その地滑り音だったのかも知れません。

段落見出し 壊れた脚立が怖い

栂立尾根を30分ほど登ると、尾根の分水線上に古い鹿柵が延々と続くようになりました。地面に接する緑の金網部分の所々に、円い穴が開いています。角のない鹿や人なら腰を低くかがめて通り抜けられるでしょう。有刺鉄線と支柱はすでにボロと言っていいほど錆が進み、鹿が誤って激突すれば、簡単に倒れそうです。はじめ、鹿柵の左右どちらを歩けばよいのか判らず、行き止まりにならないか不安がありました。でも基本的に左側を登れば、ほぼ大丈夫なようです。

標高450mくらいの小ピークで、左から尾根を合わせました。地理院地図で、424m点が記されている尾根です。今いるところは、下るときに尾根の分岐点になるので、間違えないように自分だけに分かる目印を作りました。結果的には、下山時にこの目印を迂闊にも見落とし、その424m点の方に間違って下ることになります。この小ピークから少し登ると、きょう一つ目の脚立が見えてきました。その先に送電鉄塔が立っています。

この脚立は、下から二段目のステップ(横パイプ)が無くなっていました。恐る恐る上ります。脚立の最上段に足をかけてはなりません。これは脚立使用時の鉄則です。十分な高さまで上ったら、脚を回して鹿柵の反対側のステップに移動します。でも、いつ壊れるか分らない脚立に乗るのは、なかなか怖いもの。きょうは、あと何回脚立に上らねばならないのでしょうか。

段落見出し 32号鉄塔とタロベエ峰

鉄塔には、「新多摩線32」の銘板がありました。見上げると、なかなか勇壮です。作業員用のゴンドラと垂直モノレールがありますが、高いところで一つ間違えると絶叫マシーンではありませんか。これはさておき、山で送電鉄塔を見上げるたび、人間は大自然の中で小さな存在でありながら、凄いものを造るものだと思います。奇跡には、神の奇跡、人間の奇跡、自然の奇跡、悪魔の奇跡がある!と私は言います。これは人間のプチ奇跡だ!

鉄塔の下から、宮ヶ瀬湖を望めました。オレンジ色の「虹の大橋」とピラミッド形の仙洞寺山。南山の右には宮ヶ瀬ダムと厚木市街地方面。うるさい枝越しに大岳山と御前山も見えました。この鉄塔の下は、栂立尾根では貴重な展望地です。尾根上の鉄塔が普通そうであるように、樹木が払われて明るいので休憩にも好適地でしょう。雪も真っ白できれいでした。

32号鉄塔から3分ほどで、タロベエ峰でした。厚手のベニヤ合板で作った、私製の名標が鹿柵に括り付けてあります。樹木に囲まれ、展望はありません。何もすることがなく、山頂の脚立を使って、鹿柵の左(南)側に戻るだけです。その先の鞍部まで下ると、鹿柵の三叉路がありました。ここにも壊れかけた脚立がありますが、鉄線でしっかり固定されているので安心して越えられます。そして次の脚立の向こうに、きれいな雪原が見えてきました。

段落見出し きれいな尾根を経て六百沢ノ頭へ

鹿柵を越えると、そこは別世界のようでした。明るい幅広の尾根は気分がよく、スキーも楽しめそうです。もっとも私は温暖な土地で生まれ育ったので、スキーやスケートは得意ではありません。その代わりに海と山が大好きになりました。丹沢のあちこちに、こんな幅広のすてきな尾根があります。この尾根も、新緑や紅葉の季節には、どんなにきれいになることでしょうか。振り返ると、冬枯れの枝越しに、虹の大橋や宮ヶ瀬ダムを望めました。

そのきれいな尾根を20分ほど登ると、やや暗い針葉樹林になりました。落ちた小枝を見ると、ウラジロモミ、モミ、ツガなどが混生しているようです。拾った小枝の一部をポケットに入れ、帰宅後に調べることにします。やがて尾根が細くなり、尾根上に露岩も見られるようになりました。積雪が斜面をずり落ちるのか、ヤセ尾根の中心線上は雪が少なくなっています。市町村界標の短い赤帽黒杭が露出して、よい目印になっていました。

11時29分、予定より約30分遅れて、六百沢ノ頭に到着しました。タロベエ峰と同じタイプの私製名標があります。ここで倒木に腰を下ろし、燃料補給(昼食)タイムにしました。展望もなく、狭い山頂ですが、美味しいパンを食べ、温かい紅茶を飲むことで、幸福の峰にしてしまいます。このあたりは、ウラジロモミの木が多く見られました。

段落見出し 急登を経て栂立ノ頭へ

燃料補給が済んだので、先に進みます。六百沢ノ頭から少し下って、鹿柵の扉をくぐったり、脚立越えをしたりして、相変わらずボロ鹿柵沿いに登って行きました。右手に焼山や奥多摩の山々が望めましたが、樹木が多いので、冬季限定の眺望です。幾つ目かの鹿扉をくぐった先に、鹿柵が倒れて雪に埋もれている箇所がありました。これより右手は明るい魅惑的な尾根、左は薄暗い急峻の尾根です。一瞬右に行きかけましたが、思い直して左へ進みました。これ、正解かな?

基本どおり鹿柵の左側を登って行くと、ちょっと大きな露岩がありました。ここでは露岩と鹿柵の間の狭い隙間を通り抜けましたが、左側を巻くこともできます。左手のやや離れた斜面に、露岩の頭がたくさん見えましたが、巨大な岩が雪に埋もれていたのかも知れません。この辺りが、この日一番の急傾斜でした。そしてこの急傾斜を登り切ったところに脚立が現れ、慎重に乗り越えて栂立ノ頭に到着しました。

栂立ノ頭も樹木に囲まれ、展望はありません。でも、ふっくらした、きれいな雪が積もっていました。その名のとおり、本当にツガの木が何本か立っています。雰囲気のよい峰で、立ったまま幸せの紅茶(?)を飲みました。南西の空に、本間ノ頭と鐘沢ノ頭とが高く望めます。できれば鐘沢ノ頭まで往復したいと思って来たのですが、そうすれば明るいうちに下山できなくなるでしょう。この雪では、無雪期の1.5倍ほど疲れます。欲張らずにきょうはここまでとしました。

段落見出し スイスイ下山して、道間違い

下山は雪のおかげで膝への衝撃が少なく、サクサク、スイスイと下りて行けました。新雪のようにモフモフではないので、登りで残した自分の足跡がはっきり見えません。でも基本的に鹿柵の右側を下って行けば大丈夫です。一つ一つの脚立の記憶も、まだ鮮明です。六百沢ノ頭からは、注意して真北に下りました。再びモミやウラジロモミの立つ狭い尾根を通過します。明るい幅広の尾根では、背に太陽を受けながら、きれいな雪原を気持ちよく駆け下りました。

タロベエ峰で、鹿柵の右から左に移動します。そのすぐ下が32号鉄塔。コンクリート台に腰を下ろして、15分ほどお茶休憩にしました。栂立尾根との別れを惜しみます。その後、見覚えのある脚立を越えて鹿柵の右に戻り、金沢橋へと最後の区間を下って行った…、つもりでした。後で反省すると、すでに気が緩んで、注意力が散漫になっていたのでしょう。しばらく下ると、「ここは歩かなかったゾ」と気づきました。

地図とコンパスで、方向を確認します。すると北に向かって下りているので問題ないはずだ、と思いました。本来なら、来た道と違うのだから問題のはずです。鉄塔まで戻って、もう一度針路を確認すべきでしたが、ジグザグの作業道(送電線巡視路?)に引っ張られ、下の沢まで降りてしまいました。小さな沢に3本の丸木が渡してあります。水は伏流していたので、沢に下りて対岸に上がりました。そこからテープを追って平坦地を歩き、宮ヶ瀬金沢の左岸に降り立ちました。

段落見出し 金沢林道の崩壊地に難儀

神奈川県造林公社の看板がありました。簡単な地図に、現在地が示されています。これを見ると、自分では北だと思いながら、南に向かって下りてきたのでした。何だか狐にバカされたような気分です。目の前には宮ヶ瀬金沢が右から左に流れ、対岸の土手の上に、金沢林道が見えます。沢の流れを見て、最も簡単に渡れそうな箇所を選び、右岸に移りました。土手を登る段ではアイゼンがよく利かなくて、立ち木の助けを借りながら、何とか体を引き上げました。

金沢林道は、等高線に沿ったヘアピンカーブがいくつもありました。金沢橋まで、あと5分くらいかな、と思ったとき、右手の法面から崩落した土砂、岩石、樹木などが、林道を塞いでいました。これはまずい。通過できるでしょうか? 上からの落石に気を付けながら、少しずつ進んで行きました。まだ不安定な岩石がいくつもあり、それがいつ落ちてくるかも知れない、危険な状態です。路肩も破壊されているので、修復には日にちを要するでしょう。

何とか危険個所は通過しました。今朝10時頃に栂立尾根で聞こえた轟音は、ここからだったのかも知れません。崩落現場から5分ほど歩いて、金沢橋を左に見ると、まだ釣りをしている人がいました。たくさん釣れたでしょうか。青い空を藍色に映している湖面を眺めながら、私は一息つくために腰を下ろしました。軽アイゼンを外し、ハイチュウを口に入れます。きょう一日、頼もしい相棒だった天然ストックを、そっと山ぎわに置きました。宮ヶ瀬バス停はもうすぐです。

段落見出し 追記

栂立尾根は、静かな穴場のような、いい尾根だと思います。シロヤシオの咲く頃か、紅葉の季節にまた行ってみたいと思います。秘密の花も見つかるかもしれません。金沢林道の崩落のことは、宮ヶ瀬ビジターセンターのウェブサイトから連絡しておきました。

木の葉ライン

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